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【6/19】Viraja Aupamya九日間感想連載◆5日目『名庭園』

 
 夕方くらいに外見たらすごい雨上がりのお天気だったので
 あとは遠ざかるだけだし――と思ってお仕事してたら
 夜帰る段階になって暴風雨に襲われてて
 普通に今がピークでした的な情報にうちひしがれてきました。
 台風は遠くにありて重うもの……
 
 というわけでえらいこと濡らされましたが
 列車も都合よく数分遅れてくれたおかげで乗れましたし(
 そんなこんなで折り返し地点の企画である。

『名庭園』
 (MS***さん)

 奇しくも前の収録作品に続いて、フランドールが主役を張ります。
 奇しき訳ではないのかもしれませんが。
 前の作品とは打って変わって、静かな触れから始まる物語。
 もう一人の主役・妖夢の持つ融通の利かない、
 というか融通のない気風がごくゆったり物語を支配し、
 フランドールの狂気はその奥底で不穏に蠢いているといった具合。
 静かな音楽のイントロのバックで、
 似つかわしくもない滅茶苦茶なギターリフが掻き鳴らされているような
 曰く言い難い胸騒ぎを覚えたのは私だけでしょうか。

 この物語は、最初から自らの決壊を因子として含んでいます。
 妖夢という人間の音楽が一小節ごとに完成されていき、サビを奏で上げ、
 押しも押されもしない完成品となったところでついに――
 訂正、ギターという騒々しい喩えはあまり適切ではないかもしれない。
 この作品はもっと静かに、優雅に、かつドラマティックにサビを奏でます。
 音楽にまっこと暗い私では楽器に喩えるのが不可能で、
 それでも何とか表現するならまさに言葉の音楽。

 決して華美ではないながら、さりとて淡泊でもなく、
 作者の持つ潤沢な音楽的感性がたっぷりと染み込まされています。
 これは氏だからこそ書くことが出来た物語でしょう。
 最後の壮絶な盛り上がりと爽やかな幕引きは、
 用意されたコーダへと帰結する、古き名曲の楽譜をなぞるが如きです。
 清冽な作者の美意識が垣間見えます。それは最後に物語を支配した、
 あの七色の庭に分かりやすく集約されていると言えるでしょう。

 さてストーリー。
 作品の芸術性だけを称えて終わりかと言われればそれは大間違いで、
 この作品に籠められたフランドールの寂しげな狂気は、
 前作と趣が異なり恐ろしいまでに親近感が湧くものとなっています。
 より常人に近い位置にある狂気です。完成品に対する破壊衝動、
 きれいなものを台無しにする時に生じる理屈不明の快楽、
 いずれも我々が容易に理解できる感情のごく間近な延長線上にあります。

 そしてその狂気を、妖夢に共感させたことに拍手を送りたい。
 完成することへの憧憬と恐怖、フランドールの翼に対する艶やかな傾倒。
 そして雑多な摂理を有無も言わさず押し流してくれる、
 質量を持った美への強く清々しい希求。
 形而上の理想を具現することと、その破壊に打ちのめされたがる心――
 妖夢という危うげな人間像に、よくそれを重ね合わせてくれたと思います。
 風呂敷を広げて想像逞しくすればこうした感情は、
 ともすれば我々が長生きのできない、不憫な動物であることを
 しんみりと裏打ちしているのかもしれません。
 人間は自らを待つ死という存在を賢しく理解しているが故に、
 フランドールや妖夢のような、一縷の狂気に逆らえない。

 なんてのは余興としても、全編通じて心の中に共鳴するものを感じた私は、
 この物語の最後のサビまで見事に聴き惚れてしまったのでした。
 美しい言葉の旋律、心を研ぎ澄ませて読み進めてほしい物語です。

 ところでここでも、凍れる音楽の比喩を引用した解説文が見事。
 私のような無知蒙昧な読者にも適確な情報を提供し、
 作品の神髄を楽しませてくれるための道筋を用意してくれています。
 
 ◆

 この優雅なる作者に拍手!
 というわけで明日は6日目、『Re;tromancer』がお待ちかねです。
 
 
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