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【10/9】 「どろぼうの名人」(中里十)


 えらく長引いてしまいましたが、良い作品に出会った出会ったと
 先週から騒いでたのは表題の作品でした。
 ちょっと前のガガガ文庫の受賞作品ですね。
 何人かから熱烈プッシュの声を聞いていたので、
 以来二年間以上楽しみにしていた作品です。なぜ二年間も積んだ。
 
 

 さておき。
 これは、人を好きになることのあらゆる形を網羅した一冊でした。

 本当の好き、嘘の好き。
 ひたむきな好き、倒錯した好き、
 いとけない好き、大人じみた好き、
 血縁者の好き、恋人の好き、他人の好き、
 素直な好き、迂遠な好き、
 プラトニックな好き、セックスの好き、
 打算で作る好き、心から自分のためだけの好き。
 
 感想のために敢えて「好き」という表現に代えましたが、
 物語の中では次第に、言語自体の意味は希薄化していきます。
 すべての××という感情が、それぞれの女性の心で変化して
 穏やかにそれぞれの求める形へ変化していく。
 残念ながら中には、途中過程も含めて理解しがたいものも多く、
 独特の語り口で混乱することもしばし。

 しかし恐らくですが、この本に綴られたすべての思慕を
 一様に理解し共感できる読者の方が少ないのではと思います。
 
 
 さて、この物語を引き立てる要素は三つ。
 一つ、初雪が可愛いこと。
 一つ、初雪が健気なこと。
 一つ、初雪が一途なこと。
 
 異色の物語の主人公を張る十五歳のラプンツェルは、
 この作品に通底する、人を「好き」になるその現象を
 徹底して高純度に保っている素晴らしいキャラクターです。
 この純真無垢な、真っ白な少女なくして物語は有り得ない。
 その魅力はストーリー展開に形作られた少女像に留まらず、
 読み進めていくと更に根源的な領域へシフトし、
 人間そのものへのひたむきな慈しみさえ感じられるような……
 さ、さすがに大袈裟かもしれませんが。
 
 ともあれ、このキャラクターが実に愛おしいので本当に素晴らしい。
 ロロロロロリコンちゃうんやけど……
 
 そのいじらしい振る舞いが、引用される多くの童話と相俟って
 狂おしく幻想的な雰囲気を奏で上げます。
 外部で起きている事件のことは詳らかにされませんが、
 単語の端々から容易に想像される生々しい世界。
 どろぼう達の血腥い言葉はラプンツェルを囚えた檻とコントラストを生じ、
 初雪や文という少女を、淡い夢まぼろしのように描き出します。
 外界と完全に遮断された部屋の中、
 それしか人を知らないラプンツェルのひたすら一途な振る舞いが
 この作品最大の魅力で間違いないでしょう。
 
 
 いやはや、隠れた名作との声は聞こえていましたが
 よもやこれほどの作品を二年間あまりに渡って積んでいたとは。
 そういえば最後になりますが、忘れてはならない魅力として
 一見には抵抗感さえあるこのイラストがありましたね。
 どちらかというと表紙絵や扉絵よりも、モノクロの挿絵に惹かれた。
 読んでみるとこの絵と作品の調和っぷりが本当に素敵です。
 そこも含めて名作でしょう。
 どのカットも、初雪の無垢な表情がそれぞれ必見です。
 
 ◆
 
 勢いのままに感想を書いたら大変な長さに。
 しかし今まで読んだ単巻ラノベでも確実に上位に来るであろう作品でした。

 さて、今日読んでいる本もかなりいい感じなので
 次の感想もざっくり書いていきます。
 ただ、今度はもうちょっと冷静に……(僅かながら反省しているもよう
 
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