スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【12/20】 本の感想 『風の生まれ出ずる処』

 
 最近多くなってきた本の感想日記。
 本日は、先の紅楼夢で発表された穂積名堂の小説『風の生まれ出ずる処』。
 床間さんの個人誌です。

 ◆ ◇ ◆


 穂積名堂『風の生まれ出ずる処』(著:床間たろひ) 
 

 個人的には、最後の手前あたりの空気が一番好きでした。
 それは単に掌編を束ねただけの短編集で終わってしまうのではなく、
 終わりから初めへ向かって、本全体へと吹き渡ってゆくテーマを
 最後にしっかりと与えてもらった気がしたから。
 重みもありましたが、まるでデザートのような感覚がそれで味わえたからです。

 短編集につきものの「ぶつぎり感」はありましたが、その読後感で
 「ただ寄せ集めただけだ」と思わされるのと、
 「以上、こういう世界でした」とピリオドを打ってもらえるのとは大違い。
 
 書き方が若干長編ナイズドされ、
 短編というにはやや野暮ったい文章もありましたが、
 山場や結びをここぞと引き立たせるポイントは常に抑えられ、流石だなと。
 七つのお話の中で、どれが好きでどれが苦手ということもなく、
 等しく床間さんの作品であり、つまるところ良くも悪くもブレがない。
 個人的にももう知り尽くした床間さんの作風が濃密に匂い立つ上に、
 ややいびつな個性づけでもって七つの物語が展開されたといった具合。

 執筆当時、秋空のように千々に移ろって一定しない心理状態があったのは、
 床間さんご自身のあとがきからも察せられるとおり。作品に滲んでいます。
 あれこれの迷いや躊躇が、そこかしこに見え隠れしている気がして、
 それでいっそう「床間さんの作品」という印象を掻き立てられた節もある。

 
 総じて評すると、「上手に完成された不器用な作品」と、なるかな。
 一番不器用さを感じたのは、あとがきに言葉を借りれば「肩の力の抜き方」か。
 面白くはあっても、どこか無理をしているような歪さがずっとあった気がする。
 この本の著者は「床間たろひ」だと、私が知ってしまっているのが原因です。
 致し方ないことです。時に紙一重よりも薄いところで表裏一体な二つのものが、
 私の中ではすでに糊で貼り付いて、どうしようもない訳ですから。

 それでなくともエンディングはいろいろ引っかかるところも多い、
 つまり恐らく読者によって明確に賛否は分かれる幕引きだと思いましたが、
 やはり床間さんの作品となると、私にはそれも含めての印象になるのでした。


 小説の装丁では右に出るサークルが無い、信頼と実績の穂積名堂クオリティ。
 そして兎沢さんの風雅なイラストもマッチし、素敵な短編集でした。
 全体的に、想像よりもずっと良い作品だったと、賞賛でこの感想は締めます。
 半年くらい経った後、たぶん本の後半だけもう一度読み返してみたくなって、
 本棚から取り出しまたページを開いているような気がします。
 
 
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

リンク
プロフィール

< リンク等はサイトの方へ!

Author:< リンク等はサイトの方へ!
FC2ブログへようこそ!

FC2カウンター
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

最新記事
検索フォーム
QRコード
QRコード
月別アーカイブ
最新コメント
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。