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【10/4】 というわけで紹介。

 
 
                ――『とある飛空士への追憶』(犬村小六)

 
 お姫様と飛行機乗り。空戦と身分違いの恋。
 いくつもの戦火をくぐり抜けていく二人にゆっくりと芽生えた絆は
 やがて恋心となり、生死が隣り合わせの世界で互いに想い合い、
 しかしどうすることもできない社会の壁が二人の間に立ちはだかり――
 
 アメリカ映画さながらの、王道中の王道ストーリー。
 その中で際立つのは圧倒的な筆力で描かれた臨場感溢れる空戦シーンと、
 思わず本を手放し風に手を広げたくなるような悠然たる大空の広さ。
 そして決して悲劇的になることのない主人公・シャルルの静謐な朗らかさと、
 世紀の悲恋を凛然と際立たせる超×2印象的なラストシーン。

 スリルとロマンスが、一冊の本にぎゅっと濃縮されている。
 戦記であり恋物語であり、同時にゆっくりと続く終演への記述でもある。
 ところがその中で、あからさまに調味料で味付けされたラノベテイストに加え
 そのテイストと裏腹なヒロイン・ファナの終始芝居がかった高貴な口調が、
 読者には最後まで鼻について離れないと思われる。
 そんな折、いざ迎えるこの本の最終章に何を思うか?

 
 個人的にはあの終章は、このラノベのいくつかの印象を反転させました。
 よくある手法だとは思います。
 作中の言葉を借りて「オペラを観劇した」ような読後感をもたらしてしまう
 この幕の引き方は、しかし物語が孕んだ不調和を強引に正当化するものです。

 この物語がわずかに持つ瑕瑾というべきポイントを、
 最後の最後に、とにかく乱暴にすべて正当化して幕が降りる。
 誰にも手の届かない高度何千フィートの恋を、
 ここまであの手この手で大衆化してしまう必要はあっただろうか?

 少し劇薬にすぎたその終幕は、
 人によっては副作用の方が勝ってしまったようにもみえるかもしれない。
 もはや、読み手の性格や嗜好性に左右されるでしょう。


 大空の中で人は小さく、その恋が恋でいられる年月はあまりにも短い。
 すべての現実は、この物語において箱庭に収まりうるものとして描かれる。
 この物語がああして締めくくられたことで、
 二人の恋を追いかけた読者は救われるのか? 救われなくなるのか?

 しばしば隠れた名作として取り上げられる本作。
 個人的には、その称号にふさわしい素晴らしい作品だったと思います。
 
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