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【10/29】 電子書籍についての寝言。

 
 率直に言って、紙書籍が絶滅することは当面ないと思うのですよ。
 まあ取り立てて珍しいことも言えないので陳腐な具体例になりますが
 大手新聞社のサイトは目下どこもかしこも無料でニュースを提供しているけど
 紙ベースの新聞が姿を消す気配はないし、
 創想話やPixivが安定した利用者数で賑わい続けている一方で
 同人誌が減ったなんて話も聞きません。
 飛び出すな、世界は急には曲がれない。
 一年二年だけで考えるなら、劇的な変化は当面訪れないでしょう。
 
 紙媒体であるがゆえの利便性、供給側の都合、生活への浸透、
 加えてたとえば新聞紙がなくなると天ぷらも揚げられないとか
 ゴキブリも叩けなくなるとか、
 真面目な実例を挙げればPixivのマンガ機能はそもそも使いにくいとか……
 今日時点で、電子媒体が日本の出版界を牛耳れないのには多々理由がある。

 でも「不便」というのは永遠じゃない。
 何らかの代替案や技術の進歩でいずれ喪失するアドバンテージ。
 だからこそ日本の出版界は危機を抱いているのです。
 マンガを読みにくい、と言われたらPixivが企業努力を重ねて
 実用的なマンガ機能を例えば明日にでも実装してしまうかもしれない。
 万が一にも、それが読者にとっての当たり前になってしまったら……?

 デジタルというものはとかく可能性を秘めていて、しかも尚発展途上で、
 到底不可能だろうと思っていたことを容易に可能にしてしまいうる。
 デジタルな挙動を人間の直感に近づけるジョブズ先生の試みのように、
 デジタルはアナログに対して常に攻撃と迫害を仕掛けてくる。
 そんな状態がまだこれから先、何年も続くでしょう。

 紙でできた書籍のレゾンデートルはどこにスライドするか?
 書籍の問題に限りませんが、強い競合相手に勝利する秘訣は
 その相手が決して到達し得ないところに強みを作ること。

 物理性。
 私は、そこにつきると思います。 

 
 
 電子書籍で出版界に激震が走る数年前、
 ほぼ同じ問題で揺れていた業界がありました。音楽業界です。
 「コンテンツ単体配信」という黒船に席巻された結果
 CDは駆逐され、古き良き街中の音楽ショップは深手を負い
 それまで流行の鏡だったオリコンやビルボードも形骸化しました。
 
 音楽業界がとった戦法は、まさにこの物理的優位に訴えたもの。
 黎明期には初回限定版などの特典攻勢、
 そしてCDに人気投票の投票権を封入するという大胆な手法が
 (その是非はともかく)商業的に大成功を収めたりもしてました。

 ま。そもそもCDの枚数に固執する必要があるのかは別途考えるとして、
 コンテンツの如何よりもそれを「いかに売るか」という方に腐心し、
 音楽業界が思考能力の比重を移していったのは衆知のとおりです。

 閑話休題、書籍の話。 
 紙媒体の方が馴染み深いから、とか取り回しが便利、というのは
 遅かれ早かれデジタルに領空侵犯されてくると思います。
 CDほど簡単に駆逐されはしないでしょうが、遠い未来の話とも言い切れない。

 我々は紙に書かれたものが当たり前に存在する時代に育ちましたが、
 SF小説よろしくデジタルの世界でデジタルに囲まれ育った子供達が
 いつか世代の主役になるときに、紙が便利というアドバンテージは失われる。
 まだ遠い未来のことでしょう。しかしいずれ訪れる未来かもしれない。
 数年間だけで考えるならそこまで壮大に、悲観的に考えなくてもいいんです。
 しかし電子書籍に対抗する紙媒体、という問題を真摯に考えるなら、
 より問題の本質を追究するためには長大な視点で思考を加える必要がある。

 

 その追究の先に、あるべき紙書籍の生き残る道が隠されているでしょう。
 本質的なところで紙媒体がこの先生きのこるには、と考えると、
 これはもう、物理的にモノであることしかメリットがないと思う。
 
 分かりやすい例であれば初回限定版。
 分かりやすい例であれば投票権。
 分かりやすい例であれば限定生産。などなど。
 
 これではあまりにドライな結論だ。だから同人サークルとしてもう一つ、
 紙媒体の絶対の利点を提示しておきましょう。

 ちょっと上手い表現が思いつかないのですが、
 「物理的な創作」とでも。
 本全体を使い、コンテンツではなくエレメンツとして創作を完成させること。

 というのも、デジタルは0と1でしか所詮情報を作れない。
 対して本という物理的なブツは、
 自身をあらゆるブツに変化させて絶対値として存在することが可能です。
 何をどのようにしても、根源的にデジタルで存在するモノは
 ヴァーチャルで人間の恣意が作り上げた、質量保存の法則もクソもない世界。
 デジタルは、アナログという存在に永劫アプローチすることはできません。
 何せその二つが重なってしまうと秘封倶楽部の二人の出番になってしまう。
 
 人間がもしアナログから旅立ってデジタルの海に沈んだとき、
 果たしてどの程度息が続くのか……それは未来的すぎて想像もつきませんが、
 思い出の写真やトロフィーや位牌や貨幣や小学生の漢字書き取りノートが
 デジタルの時代で絶滅に追い込まれるとは考えづらい。
 アナログは「実存在性」と読み替えられ、
 我々の意識に深く根ざした価値観の揺るぎない本質として
 この「実存在」に意味を見いだす機会が多々存在します。
 この本質まで塗り替えられてしまわない限り、
 本が本である意味は細々ながら継続するのです。

 たとえば四面楚歌であり、ゆめかばんであり、
 物語の展開や世界観そのものを物理的な機構に組み込むギミックには
 本という物理媒体でしかできないものもある。
 彼らはそれを先駆的にやっておられます。
 容易に無限に複製可能なデジタルと違い、この創作は実存在を伴っている。
 眼前に実存するブツの中でしか存在できないプレミアムな物語。
 コンテンツのプラットフォームだったはずの紙束が
 エレメンツとして存在し、プレミアを獲得し、
 その存在感はある種美術工芸品に近いものになっています。

 まあ人比良さんたちは極端な例として出しましたが、
 出版業界がどうしても紙媒体を生き残らせたいなら、
 最終的に到達すべき思考はそこだと思うのです。
 古き良き様式美への回帰や、今日や明日までの利便性を盾にして
 その場しのぎして逃げるのではダメ。

 別に一般書籍が特殊装丁だらけになるべきとか
 CDやブルーレイみたいに初回限定版をしこたまつけろという意味ではない。
 本が存在する必要性を語るなら、
 つまり言い訳ではなく「理由」を見つけたいなら、
 私はそういう切り口でなければと思うのみです。
 
 結論のない話になりました。
 つまるところ紙の本を待ち受けてるのは、
 長い視点で言えばかなり苛烈な未来だと思います。
 もっとも――それが私の目の黒いうちに訪れるかといえば微妙ですけども。

 今回の話にただ結論を出したいなら、
 商業的な側面を考慮に入れて割り切りで考えた方が手を講じやすいと思う。
 今日はあくまでそれはしませんが。

 私はむしろ、太古の昔から姿を変えなかった本という存在が
 その座を脅かされる、歴史的にも大きな転換点にあることを
 やや感慨深く思います。アナログとデジタルの、明確な抗争なので。
 だからこそ電子書籍による紙書籍への領空侵犯という事件は、
 ある種SF小説よりも前衛的で、幻想的な要素を孕んでいると思うのでした。
 すみません、出版業界の当事者の方々にしてみれば
 あまりにも砂糖菓子的な、外野の物言いに聞こえると思われますが……。
 
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